タケル・イダイヤの冒険

ネット右翼の定義(古谷経衝・三浦瑠璃・宮台真司)

今日は私が長く抱いていたあるモヤモヤが晴れたような気がするという意味で
歴史的な日である。

ことの始まりは、AbemaPrime2019年11月13日放送のネット右翼に焦点を当てた
回である。

ひろゆき、三浦瑠麗、古谷経衡、夏野剛、箕輪厚介(略氏)といった今では恐らく
見られないであろうメンバーが揃った回だったのだが、そこで古谷氏がネット右翼
について独自に定義付けした上で解説していた。

それによると、ネット右翼の典型は、我々が想像するような社会から孤立した
どうしようもない引きこもりではなく、むしろ平均年収超で学歴も四大卒以上の
勝ち組(自営業者、中小企業の社長や役員、公務員、会社員)と言えるような
地位にいる人々なのだという。

彼はその理由について、勝ち組であるからこそ、間違った使命感を抱くことで、
強い言説を言うようになるのだと述べていた。

一方、三浦瑠麗氏はそれに反論し、負け組勝ち組、つまり所得による分布よりも、
将来における収入増が期待できるか否かによる分布の方がより強い相関があると
述べていた。

つまり、両者はネット右翼に陥る理由の主題が、自身が勝ち組になったことに
よって生じる強い使命感にあるのか、或いは自身の将来に希望が持てないことから
来る危機感にあるのかという点で対立していたのである。

私は後にこの動画を観て、なんとはなしに、三浦氏の説の方が説得力があるという
認識を抱いていた。しかし、古谷氏についてもいくつかの媒体で見かけた上で好感
を持っていたので、モヤモヤ感を抱いていたのである。

そして時は経ち、2023年3月31日放送ニコ生深堀TVの古谷氏ゲスト回を観た。
ここで古谷氏は、あのAbemaPrimeの回と同様のネット右翼の定義を解説して
いた。

その上で、宮台真司氏が、古谷氏のネット右翼の定義の勝ち組と並ぶもう一つの
特徴として挙げられていたシニア世代(当時は平均年齢38だったのだが、現在は
彼らがそのままスライドしているのでこのような名称にしている)に関連して、
団塊ジュニア世代(ロスジェネ世代)には後のミレニアル世代、Z世代よりも強い
相対的剥奪感があるとして、それがネット右翼的思想形成に影響しているという
ことを述べた。

相対的剥奪感とは、絶対的に何かを剥奪されたというのではなく、ここで言えば
親の団塊世代と比較することで生じるもっとやれたはず感を指している。
また、悲しい事に私を含むその下の世代にはそもそも最初から希望がなかったため
にもっとやれた感を味わう事がない、つまり相対的剥奪感も少ないというのが
宮台氏の主張である。

また、氏は更にデュルケムの自殺論も引用した。彼が引用したのは、曰く貧乏人
よりも金持ちの方が自殺率が高いのは、貧乏人には金持ちになれば幸せになれると
いう希望があるが、金持ちにはこんなはずじゃなかった、もっとやれた感だけが
残ってしまうからというものである。

更に更に、氏は丸山眞男氏が、彼が定義した亜インテリ(自営業者、旧名主)は
新有力者層である産業ブルジョワ人達に劣等感を抱きがちであり、その結果権威に
縋ったり彼らの台頭を許さない傾向があると述べていたことも引用した。

ここまで聞いたところで私のモヤモヤは見事に解消された。何故なら、
ここで三浦氏の言う将来への不安から来る危機感と古谷氏の言う勝ち組という
ネット右翼敵思想形成原因が一致したからである。つまり、勝ち組であるから
こそ、希望を失い劣等感を抱き、またそれがロスジェネ世代の特徴としても
位置付けられ、それが権威(与党)支持に繋がったり、台頭する新興勢力やよそ者に
反感を持ったりした結果、ネット右翼的な思想が形成されたという話なのである。

恐らく突き詰めるとそれぞれの主張にはある程度の差異が見受けられるはず
なのであるが、基本的には一本筋の通った理論が成立していると思われる。
私は勝手な充実感を抱いているが、多くの方にもこの説に目を通していただき
それぞれで考えを巡らせてみて欲しい。