タケル・イダイヤの冒険

とにかく感想

Winny(映画)の感想

普段は当たり前にスマホのメモを使って文章を書いているが今日ばか
りはたどたどしいタイピングで文字をつづらせてもらう。金子(東出昌
大)が冒頭チョコを食い食いプログラミングに熱中するシーンの時点で
すでに劇中に魅入られてた私は手に汗握りつつも様々なことを考えた。

・ネット黎明期の革命

winnyの公開というのもあって「当時winnyが入ったpcを持っていた私
はえも言われぬ全能感に包まれていたものです」という類のツイート
を最近よく見かける。あるいは、「ネットに初めて触れたときはこれ
で世界が変わるんだと本気で思ったもんだよ」を枕詞に昨今のネット
世界への失望を語る年配識者をよく見かける。私は今日やっと彼らの
感情を少しばかりかは理解することができたように思う。それはきっ
と、今日のわれわれが、転出届を役所に行かず、ネット手続きで完結
させることができるようになったことに感動した、などとは比べ物に
ならないレベルの感情の高まりであったに違いない。。どういうこと
かというと、要するに今日のサブスクの片りんにwinny利用者たちは
あの時代に触れていたのである。例えば、恥ずかしながら私にも初め
て漫画村に触れた時の忘れられない興奮がある。しかしそれは、音楽
ではmusicFMなる者が蔓延し、アニメ等映像に関してはYouTubeある
いは今はなき某違法サイトで視聴できることが当たり前となった時代
の後のことである。また、エロについて言えばむしろ違法な画像動画
に触れる以外の選択肢を知らない有様である。Winnyは、それら全て
が夢物語であった時代に突如として現れたのである。そんな気分を形
容するのに、全能感という言葉は決して言い過ぎということはないだ
ろう。また、匿名で世界に向けて告発することについては、最早それ
が当たり前(困ったら110番的な感じで)となった現在ではそのやば
さについて改めて思考することなどまずないが、それが実現したその
瞬間は多くの人々が開かれた新たな可能性を、弱くそして正しき者た
ちが報われる世界を希望したであろうことは容易に想像することがで
きる。

タイピング以前に、酔いすぎて体力的に椅子に座ることが困難となった
ため、ここからは泣く泣くいつものスタイルで文章を書かせていただく

・生み出す欲望

この映画を見た多くの者たちはYouTubeが、Netflixが、spotifyが日本
発であったらという夢を抱き、そしてその可能性を潰した権力を憎み、
そして現代のそういった方面への日本の苦手意識っぷりを嘆いたに違い
ない。なので私は敢えてこれに異を唱えようと思う。このクソ逆張り天
邪鬼は、人々の欲望に想いを馳せた。欲望というのは、それが倫理的に
許されないと知りながらも天才たちの技術を悪用する我々のようなクズ
のそれではなく、まさしくその技術を生み出そうと苦心した天才たちの
欲望についてである。0から1を生み出す発想と技術を持つ一握りの天才
がいた時、彼らは果たしてそれを生み出すことを諦めることができるの
だろうか?いや、葛藤が全くなかったとは私も言わない。しかし、葛藤
した末に結局彼らは自らの手で神を生み出し、それを人々の前に降臨さ
せることを止められなかったのではないだろうか?それが、人間の探究
心や自己顕示欲といった本質なのではないだろうか?私は、私が臆病が
故のポジティブ人間であるので、上記のようなどうにかなったかもしれ
ない過去に後悔することを避けたいが故にこのような発想に至ったこと
を知っている。しかし、まあこのような発想もあるということを頭の片
隅に置いておくことも無駄ではないだろうと思う。

・漫画村とWinny

非winny世代の私はこの事件に漫画村を重ねた。そういえば、以前星野ロミ
氏は、第二第三の星野ロミが必ず現れる的なことを言っていた。漫画を愛す
る私はそれを聞いて黙れ***と思ったし、世界で一番嫌いな人は誰と聞か
れたら彼の顔が思い浮かぶぐらいには真っ直ぐに彼の所業を否定していた。
いや、この映画を観て彼を見直したとかそういう単純な話ではない。だが、
やがて誰かに突破される山ならば自らがそれを乗り越えてその先へ進みたい
という気持ちは理解することができた。私はまだそれ以上の考えには至って
いない。しかし、星野ロミ氏、金子勇氏、そして警察と検察、彼らにはそれ
ぞれの想いと立場があったことを慮ることができた点でやはり、金子勇氏の
戦いには意味があったのだと思う。

 

最後に、多くの偉大な先人たちと同じように飽くなき探究心で今日の我々の
素晴らしい文明に貢献してくださった金子勇氏に感謝を捧げて、感想を締め
さていただく。

もう一言。秋田弁護士(吹越満)が北村(渡辺いっけい)を尋問し追い込むシー
ンが面白すぎた!!秋田氏の超高等テクニックと吹越満氏の熱演に舌を巻い
た同士はきっと多いことだろう。